発想記号 Italian

Doloroso

/ doloˈroːzo /

ドロローゾ

dol. 発想記号

「痛ましく、悲痛に」。dolore(苦痛)という、感情というより 肉体的な「痛み」そのものに近い語根を持つ。 悲しみの中でも、最も生々しい痛みの感覚を音楽に込める。

mesto・tristeとの違い

mestotristeが「悲しみ」という感情を指すのに対し、 dolorosoは「痛み」という身体感覚に根ざしている。 涙ではなく傷——苦悩がまだ癒えていない、 生々しい段階の感情を表すときに選ばれる語だ。

声楽との結びつき

キリスト教の聖歌「Stabat Mater dolorosa」(悲しみの聖母は佇み)に この語根が刻まれている通り、声楽曲、とりわけ受難や悲哀を主題とする 宗教曲との結びつきが深い。 器楽曲に転用される際も、この「歌われるべき痛み」の系譜を引き継ぐ。

語源

ラテン語dolor(痛み、苦しみ)の形容詞dolorosusに由来。 英語のdolorous(痛ましい)、doleful(悲痛な)と同語源。 医学用語の「痛み」を意味する語根が、 そのまま感情表現に転用された珍しい系統だ。

演奏の核心

音と音のあいだに「傷」を感じさせること。 滑らかにつなげすぎず、わずかな抵抗やためらいを残すことで 痛みの生々しさが立ち上がる。 美しく整えすぎないことこそが、dolorosoの誠実さだ。

Pergolesi

スターバト・マーテル

冒頭歌詞「dolorosa」— 様式の原型を成す宗教曲

Rossini

スターバト・マーテル

劇的な悲痛さをベルカントの様式美で歌い上げる

Dvořák

スターバト・マーテル Op.58

自身の子を失った悲しみが投影された大規模合唱曲