ジャズ和声 English

Tension Note

テンション・ノート

コードの基本構成音(1・3・5・7度)に加える上位倍音。具体的には9度・11度・13度(それぞれ2・4・6度のオクターブ上)。コードに色彩・緊張・複雑さを与え、ジャズ和声の「スパイス」として機能する。どのテンションを選ぶかが奏者の個性を決める。

テンションの分類

ナチュラル・テンション(使いやすい)
• 9度(Cmaj7ではD)
• 13度(Cmaj7ではA)
• 11度(Fm7ではB♭)

アボイド・ノート(スケールにあるが使いにくい)
• Cmaj7の11度(F)→ 長7度(B)との半音関係が濁る

オルタード・テンション(V7コードに多用)
• ♭9、♯9、♯11(♭5)、♭13(♯5)

コードごとの例

Cmaj7(9):C, E, G, B, D — 明るく豊か
Dm7(9,11):D, F, A, C, E, G — ドリアン的な柔らかさ
G7(♭9):G, B, D, F, A♭ — 強い緊張、解決への引力増大
G7(♯11):G, B, D, F, C♯ — リディアン・ドミナント的な浮遊感
G7(♭9,♭13):G, B, D, F, A♭, E♭ — オルタード・ドミナントの強烈な緊張

機能との関係

テンションはコードの「色」を変えるが、機能(トニック・ドミナント・サブドミナント)は変えない。G7にどんなテンションを加えても「Cへ解決しようとするドミナント機能」は維持される。♭9を加えても♯11を加えても、G7はG7。

ただし、テンションの強度が機能の「声の大きさ」を変える。G7(♭9♭13)はG7よりも「Cへ解決したい」という引力が強く、G7(♯11)はより曖昧でモーダルな色彩を持つ。

コンピングでのテンション

ピアノのコンピングでは左手にガイドトーン(3度・7度)を配置し、右手でテンションを散りばめるアプローチが基本。これにより内声と上声が分担されて音響的に整理される。

テンションは「理論通りに配置する」より「前後のコードとの流れの中でどう色彩を変化させるか」を聴くことが重要。Bill Evansはテンションの「解決」を次のコードへの橋渡しとして巧みに使った。あるコードの9度が次のコードの3度になる——こうした声部連結がEvansの和声進行に深みを与えた。

「使えるテンション」の判断

テンションの選択はコード・スケール理論から導かれる。Dm7にドリアン・スケールを当てると、9度(E)・11度(G)・13度(B)が全てアヴェイラブル・テンションになる。G7にミクソリディアンを当てると、9度(A)・13度(E)が使いやすく、11度(C)はアボイドになる。

アドリブにおけるテンション

アドリブでコードトーン(1・3・5・7度)のみを使うと安定しているが平板。テンション(9・11・13度)を加えると色彩が出るが「乗っている」感覚が難しい。この両者のバランスが「ジャズらしいライン」を作る鍵。コードトーンへの「帰着」を意識しながらテンションに「寄り道」する感覚。

Bill Evans

Peace Piece (1958)

Cペダル上でテンションを漂わせ続ける即興。テンションの「溶解」の極致

Herbie Hancock

Maiden Voyage (1965)

サスペンデッド・コードとテンションを中心とした和声。解決しないテンションの美

McCoy Tyner

Passion Dance (1967)

4度ヴォイシングによるテンションの積層。クォーター・ヴォイシングの教科書的演奏