ジャズ奏法 English

Comping

コンピング

ジャズのピアノ・ギター・ヴィブラフォンなどの和音楽器が、ソリストの演奏に対してコードをリズミックに当てる伴奏技術。"accompany"(伴奏する)または"complement"(補完する)の短縮形とも言われる。「何を弾くか」よりも「いつ弾き、いつ弾かないか」が全て。

タイミングの原則

コンピングは完全にシンコペーション主導。拍のアタマにコードを置くより、2拍・4拍や拍の裏(1と、2と)にコードを置く方がジャズらしいコンピングになる。固定パターンの繰り返しは「自動伴奏機」になるため避け、ソリストのフレーズの形・長さ・休符に反応して動的に変化させる。

「ソリストがフレーズを演奏している間は弾かず、息継ぎの瞬間に短いコードを置く」というアプローチが基本的な会話のモデル。ソリストの音と同時に弾くと「かぶる」、少し遅れて応えると「会話」になる。

ヴォイシングの選択

コンピングにおいてヴォイシング(コードの音の配置)は「何を入れ、何を省くか」の判断。根音・5度はベースが担うためピアノは省いてよい。3度・7度(コードのキャラクターを決める音)は最優先。テンション(9・11・13度)の追加で色彩が変わる。

Bill Evansの「内声に密集させたクローズド・ヴォイシング」、McCoy Tynerの「完全4度を積み重ねるクォーター・ヴォイシング」、Herbie Hancockの「テンション音を前面に出したオープン・ヴォイシング」——時代ごとのスタイルがある。

対話としてのコンピング

「コンピングはソリストとの対話」——Bill Evansはそう言い続けた。ソリストが上昇するフレーズを弾けば下声部でそれを支え、ソリストが疑問形で終われば答える動きを置く。ソリストが「叫べば」コンピングは「固まり」、ソリストが「囁けば」コンピングは「空間を開ける」。

ドラムとのインタープレイも重要。ドラムとピアノが全く同じリズム・パターンを同時に演奏すると「うるさい」。時差を持って、あるいは逆位相で演奏することで「ポリリズム的な会話」になる。

ピアノ以外のコンピング

ギターはピアノに比べて音量が小さいため、より積極的に弾いてもバランスが取れる。フレデリー・グリーン(Count Basie Orchestra)は4ビート・コード刻みを極限まで洗練させ、「聴こえない壁紙」のようなコンピングを確立した。

ピアノとギターが同時にコンピングすると「渋滞」する。トリオ(ピアノ+ベース+ドラム)ではピアノが全てのコンピングを担い、カルテット(+管楽器1本)でもピアノがコンピングの主担当になることが多い。

Bill Evans

Waltz for Debby (Village Vanguard, 1961)

モデルケースとなる繊細なコンピング。ソリストとの対話がほぼ完璧に収録されている

McCoy Tyner / Coltrane

A Love Supreme (1964)

強靭な4度ヴォイシングによるコンピング。コルトレーンの高密度なラインを正面から支える

Herbie Hancock / Miles Davis

E.S.P. (1965)

空間を活用した先進的コンピング。弾かない部分の大きさがマイルスの音楽に合致する