II–V–I
ツー・ファイブ・ワン
定義
ジャズにおける最も基本的なコード進行。IIm7—V7—Imaj7(メジャー・キー)または IIm7♭5—V7—Im7(マイナー・キー)からなる3つのコードの連続。ジャズ・スタンダードの大半はこの進行を複数含み、アドリブの「地図」として機能する。
進行の仕組み(メジャー)
Cメジャーでの基本形:Dm7(IIm7)→ G7(V7)→ Cmaj7(Imaj7)
V7(ドミナント)がIへ解決する「完全終止」が和声の核心。IIm7はV7への準備コードとして機能し、根音がD→G→Cと完全4度ずつ下行する(別の見方では5度上行の連鎖)。V7が持つトライトーン(F♯とC)がImaj7の根音と3度(CとE)に解決することが、この強い引力の源。
マイナー・キーの違い
Cマイナーでの形:Dm7♭5(IIm7♭5)→ G7(V7)→ Cm7(Im7)
マイナーではIIコードが「ハーフ・ディミニッシュ(m7♭5)」になる。V7はメジャー・キーと同じドミナント7th(長3度・短7度)。マイナーのV7にはオルタード・スケールやハーモニック・マイナー・スケールを当てることが多く、解決への緊張がより強くなる。
アドリブにおける扱い
各コードへのスケール対応の基本形:IIm7にドリアン、V7にミクソリディアン(またはオルタード)、Imaj7にイオニアン(またはリディアン)。この「コード・スケール理論」的アプローチが入門として広く教えられる。
しかし多くの名奏者は「3コードをそれぞれのスケールで弾き分ける」よりも「II-V-I全体を一つの流れとして捉える」感覚を持つ。チャーリー・パーカーは"Confirmation"のII-V-Iの連鎖を一本の線として演奏していた。
連鎖と転調
多くのジャズ・スタンダードはII-V-Iが複数のキーにわたって連鎖する。「Autumn Leaves(枯葉)」はGメジャーとGマイナーの両方のII-V-Iが交互に現れる。「Giant Steps」(コルトレーン)はII-V-Iを長3度サイクルの3つのキーに均等に配置した革新的な構造を持つ。
「どのコードのII-V-Iか」を瞬時に認識する耳は、ジャズ演奏の基礎能力の一つ。
代表的な用例
Jazz Standard
Autumn Leaves(枯葉)
GメジャーとGマイナーのII-V-Iが交互に現れる。II-V-I学習の定番曲
Charlie Parker
Confirmation (1946)
複数のキーにわたるII-V-Iの連鎖。ビバップの和声語法の教科書
John Coltrane
Giant Steps (1960)
II-V-Iを3つのキーに均等配置した「コルトレーン・チェンジ」。通常の耳には解読困難な進行