Con sordino
コン・ソルディーノ
定義
弱音器をつけて演奏することを指示する語。イタリア語 con(〜と共に)+ sordino(弱音器・ミュート)。楽器の種類によって意味する物理的な操作が異なるため、ピアノの場合は特に注意が必要。→ Senza sordino
弦楽器の場合
木製または金属製の弱音器(ミュート)を駒に挟んで装着する。弱音器が駒の振動を抑制し、倍音の分布が変わることで音色が著しく変化する。高音域の倍音が減り、全体的にナーザル(鼻にかかった)で柔らかい、「ベール越しに聞こえる」ような音色になる。
弱音器の着脱には数秒かかるため、楽譜上では十分な準備時間(少なくとも1小節前)に指示が書かれることが多い。弦楽四重奏でのcon sordinoは全4人が同時に変化する特殊な響きを生み出す。
金管楽器の場合
ベル(管の出口)に金属製・プラスチック製・繊維製のミュートを挿入する。ストレート・ミュート(直線的な金属製)、カップ・ミュート(カップ状)、ハーモン・ミュート(茎付き)など種類によって音色が異なる。
金管のミュートは音色変化だけでなく音量も変える。楽器によってはピッチが若干変わるため、奏者は補正が必要。ジャズではハーモン・ミュートがMiles Davisのバラードの代名詞になっている。
ピアノの場合(特殊な意味)
ピアノにおける「sordino(ソルディーノ)」はダンパー(弦の振動を止めるフェルト片)を指す。con sordino = ダンパーと共に = ダンパーが弦に触れている状態 = ダンパーペダル(右ペダル)を踏まない、つまり通常の演奏状態を意味する。
Beethovenの時代のフォルテピアノではダンパーペダルを「足で操作するsordino機構」として捉えており、con sordinoは「乾いた通常音」を指示する。現代の演奏者は「senza sordino」の指示がなければペダルを踏まないことを意味する、という理解が正確。
木管楽器・打楽器の場合
木管楽器では通常sordino指示は使われないが、オーボエ・ダモーレやクラリネットではまれに弱音器的効果を求める指示が書かれることがある。
打楽器(ティンパニ)ではcon sordinoは皮の上にフェルトや布を置いて音をくぐもらせることを指す場合がある。シンバルでは弦やクロスを当てて倍音を抑制する指示として使われることがある。
代表的な用例
Mahler
交響曲第5番 嬰ハ短調(1902年)第4楽章 Adagietto
弦楽器のcon sordinoが曲全体を支配する。水面のような柔らかく透明な音色が20分続く
Ravel
弦楽四重奏曲 ヘ長調(1903年)
弱音器付き弦楽の色彩的な使用。フランス印象主義の音響美学がcon sordinoで表現される
Beethoven
ピアノソナタ第14番「月光」Op.27-2(1801年)第1楽章
"senza sordino"(ダンパーなしで)という対義指示が冒頭に書かれる。→ Senza sordino参照