Sordino
/ sorˈdiːno /
ソルディーノ
定義
楽器に取り付けて音量を抑え、音色を変える器具の総称。 弦楽器の駒に挟むクリップ、金管楽器の管に差し込む栓など、 形状と素材は楽器によって異なるが、 音を「こもらせる」という機能は共通している。
弦楽器のソルディーノ
駒(ブリッジ)に挟む小型のクリップ。ゴム製・金属製・木製があり、 装着すると弦の振動が駒を通じて伝わりにくくなる。 音量が落ちるだけでなく、音色が内向きになり、影のある質感が生まれる。 オーケストラでは「con sord.」の指示で全員一斉に装着し、 「senza sord.」で外す。装着・解除のタイミングに数小節の余裕が必要なため、 作曲家は少し前に指示を書く。
金管楽器のソルディーノ
ベル(朝顔)に差し込む栓。形状によって音色が大きく変わる。 ストレートミュートは細く鋭い音、カップミュートは丸く柔らかい音、 ハーモン(ワワ)ミュートはステム次第で独特の鼻声になる。 マイルス・デイヴィスがハーモンミュートを好んだのは有名で、 「マイルス・サウンド」の核を作った道具でもある。
「月光ソナタ」とピアノのsordino
18世紀後半〜19世紀初頭、「sordino」はピアノのダンパー機構を指していた。 「月光ソナタ」Op.27-2の冒頭には 「Si deve suonare tutto questo pezzo delicatissimamente e senza sordino」 ——「この曲全体をきわめて繊細に、ソルディーノなしで弾くべし」とある。 当時の「senza sordino」は「ダンパーを上げたまま」、 つまり現代のサステインペダルを踏み続けることを意味した。 現在の管弦楽語法とは全く逆の意味になるため、混同に注意が必要だ。
語源
イタリア語 sordo(こもった、聞こえない)← ラテン語 surdus(耳が聞こえない)。 英語の absurd(不合理な)と同語源で、「感覚が遮断された」という 根本イメージを持つ。楽器の音を「耳から遠ざける」道具に この語が当てられたのは自然な展開だ。 複数形は sordini。略記は sord. または con sord. / senza sord.。
代表的な用例
Beethoven
ピアノソナタ第14番「月光」Op.27-2
冒頭指示 — 歴史的なsenza sordino(ダンパーを上げたまま)の典拠
Mahler
交響曲第5番 嬰ハ短調
第4楽章アダージェット — 弦楽器全体のcon sordinoが生む深い陰影
Tchaikovsky
弦楽セレナード ハ長調 Op.48
第2楽章 — con sordinoの弦が生む夜想的な音色
Bartók
弦楽四重奏曲 第4番 Sz.91
sordinoと様々な特殊奏法を組み合わせた20世紀的語法