Syncopation
シンコペーション
定義
本来弱拍にあたる位置にアクセントを置き、あるいはタイによって強拍を「飛び越える」ことで、期待されるリズムの規則性を意図的に崩す技法。ジャズの推進力の根幹をなし、古典音楽からロックまで広く存在するが、ジャズでは「日常的な言語」として使われる。
シンコペーションの2種類
①弱拍へのアクセント:4/4拍子の2拍・4拍(バックビート)に強調を置く。ジャズやロックではこれが「標準」に近い。
②タイによるシンコペーション:弱拍の音符が次の強拍までタイで伸び、強拍でのアタックが消える。ジャズで最も多いパターン。例:「1拍目の裏(1と)でピアノが和音を鳴らし、2拍目のアタマを跨いで持続する」。
ジャズにおける役割
ジャズのリズム感は「シンコペーションが日常」。クラシック音楽ではシンコペーションは特別な効果として使われるが、ジャズでは拍の頭に音を置くことの方が「意図的な選択」になる。
コンピングとシンコペーションは切り離せない。ピアノがコードを置くタイミング、ドラムがアクセントを置くタイミング、ベースがコードを変えるタイミング——これら全てにシンコペーションの意識が働いている。
ラグタイムからビバップへ
スコット・ジョプリン(ラグタイム)が19世紀末にシンコペーションをポピュラー音楽の前面に出した。左手が規則的なベースを保ちながら右手が細かくシンコペーションするスタイルが、後のジャズ・ピアノの原型となった。
ビバップではシンコペーションがさらに複雑化し、フレーズの「開始点」と「終了点」をビートのどこに置くかが奏者の個性を示す要素になった。チャーリー・パーカーのフレーズは、どこから始まりどこで終わるかが予測不能なシンコペーションの連続。
ジャンルを越えるシンコペーション
シンコペーションはジャズ固有ではない。クラシック音楽ではヘミオラ(3拍子の中の2拍子的アクセント)がシンコペーションの一形態。
ラテン音楽(クラーベ・パターン)、アフリカ音楽、ファンク(「1の裏」への強調)にも本質的なシンコペーションがある。ジャズはこれらの影響を吸収しながら、独自のシンコペーション語法を発展させた。
代表的な用例
Scott Joplin
Maple Leaf Rag (1899)
ラグタイムにおけるシンコペーションの原型。左手の規則性と右手の不規則が対話する
Charlie Parker
Ko-Ko (1945)
ビバップにおける高密度シンコペーション。フレーズ開始点が常に予測を裏切る
Bill Evans
Waltz for Debby (1961)
3/4拍子でのシンコペーション。拍の区切りが曖昧になる浮遊感