Lusingando
/ luzinˈgando /
ルジンガンド
lusing.
発想記号
定義
「なだめるように、甘く誘うように」。lusingare(誘惑する、おだてる)に由来し、 聴き手をそっと引き込むような、媚びを含んだ甘美さを指す。 ロマン派ピアノ音楽特有の繊細な語だ。
amorosoとの違い
amorosoが「愛」そのものの表出だとすれば、 lusingandoは「誘う・なだめる」という働きかけの動作に重心がある。 amorosoが感情の状態を表すのに対し、 lusingandoは聴き手との関係性——音楽が誰かに語りかける身振りを含んでいる。
ロマン派ピアノ音楽との結びつき
盛期ロマン派のピアノ作品で 好んで用いられた、装飾的で甘美な旋律の扱いを示す語。 右手の旋律がまるで囁きかけるように動く箇所で、 この指示が選ばれることが多い。
語源
ラテン語lusus(遊び、戯れ)に関連するとされる イタリア語動詞lusingare(おだてる、誘惑する)の現在分詞形。 「遊び心を持って誘う」という、軽やかさと媚びの両方を含んだ語根を持つ。
演奏の核心
音を押しつけず、わずかに引いて聴き手の耳を引き寄せること。 アゴーギク(微妙なテンポの揺れ)とディナーミク(強弱)を ごく繊細に操ることで、誘うような質感が生まれる。 過剰になれば媚びすぎ、抑えすぎれば伝わらない——その境界の語だ。
代表的な用例
Chopin
夜想曲・バラード(各種)
甘美に装飾された旋律線にlusingando的な性格が宿る
Liszt
「巡礼の年」「愛の夢」など(各種)
繊細な右手装飾に見られる誘うような甘さ