Gridando
グリダンド
定義
叫ぶように、喚き立てるように。音量・音色ともに限界近くまで張り上げ、怒りや恐怖・苦悶を音で叫ぶことを求める指示。20世紀以降の音楽でとくに頻出し、感情の爆発的な解放を音楽的に要求する語だ。
furioso・feroce との違い
furioso(激怒して)はエネルギーの爆発そのものを指す——激しさとスピード。feroce(猛烈に)は野性的な攻撃性の性格だ。gridando はその両者と異なり、声を出す行為——「叫ぶ」という動詞のイメージが核心にある。音量的な強さより、人間の叫び声が持つ切迫感・非制御性が求められる。音色が「美しい」必要はない。
語源と現在分詞形
イタリア語 gridare(叫ぶ・喚く)の現在分詞形——「叫びながら」。英語に対応する動詞はないが、cry / shout / scream に相当する。同様の現在分詞形の発想記号として mormorando(つぶやきながら)、singhiozzando(すすり泣きながら)等がある。いずれも声を出す行為を音楽に転用した語だ。
演奏上の意味
gridando の演奏では、音量をfffに向けて一気に解放し、音色の美しさより押し出す力を優先する。弦楽器では弓圧を最大まで高め、駒寄りで鋭く擦る。管楽器では息を限界まで押し込む。通常の「美しく演奏する」基準を意図的に超えることが求められる——「叫んでいる」という印象が伝わらなければ gridando は成功していない。
20世紀音楽との結びつき
gridando は古典・ロマン派の楽譜には稀で、主に表現主義・前衛音楽の語法だ。20世紀の後期作品で見られる。「感情を音楽に変換する」古典的な美学から「人間の衝動をそのまま音にする」という20世紀の衝動を体現する語だ。