Carezzando
カレッツァンド
定義
なでるように、愛撫しながら。音の表面を撫でるような柔らかさと温もりをもって演奏する指示。音を突き刺さず、押しつけず、手のひらで包むように触れる感覚。
奏法上の意味
弦楽器では弓圧を極力抑え、弓の速度でコントロールする。ピアノでは鍵盤の表面に指が吸い付くような感覚で、打鍵の衝撃を完全に消す。音は出るが、音の「始まり」が見えない——発音のエッジが丸くなり、フレーズが滑らかに連なる。dolce より触覚的で、cantabile より短音型への適用が多い。
語源
動詞 carezzare(なでる・愛撫する)の現在分詞形。carezza(愛撫・優しい接触)が語根。英語 caress(愛撫)と同語源。現在分詞(-ando)形のため、「今まさになでながら」という進行感がある。形容詞形は carezzevole / accarezzevole(愛撫するような)。
dolce・soave との違い
dolce(甘く・優しく)は音色の甘さを求める広い指示。soave(穏やかに・柔らかく)は滑らかさと平静さを指す。carezzando はそれらより接触の感覚に特化しており、手で触れる行為そのものをイメージさせる。より身体的・触覚的な指示だ。
accarezzevole との関係
accarezzevole(愛撫するような)は同語根の形容詞形で、carezzando とほぼ同義。accarezzevole が「そういう性格の音楽」を示す形容詞として使われるのに対し、carezzando は演奏行為を示す副詞的な現在分詞として機能する。楽曲によって使い分けられるが、求める音は同じ方向を向く。