Con tenerezza
コン・テネレッツァ
定義
優しさをもって、柔らかな思いやりをもって。音を傷つけず、押しつけず、包み込むように演奏する指示。carezzando(撫でるように)よりも感情的な深さがあり、dolce(甘く)よりも思いやりの温かさを帯びる。
tenerezza の感情的な質
tenerezza(柔らかさ・優しさ・愛情)は、強い感情ではなく繊細な感情だ。弱い者への思いやり、子供への親の眼差し、壊れそうなものを扱う手つき——そういった感情の質が音楽に求められる。音量は多くの場合小さく、フレーズの流れはなめらかで、音の境界は柔らかい。
語源
イタリア語 tenero(柔らかい・優しい・若い・みずみずしい)の抽象名詞形。ラテン語 tener(柔らかい・デリケートな・若い)から。英語 tender / tenderness と同語源。「柔らかく若々しいもの」という原義が、音楽では「デリケートな優しさ」として表れる。teneramente(優しく)も同語根の副詞。
dolce・con amore との違い
dolce(甘く)は音色の甘さを広く求める。con amore(愛情をもって)は演奏行為への献身と愛着を求める。con tenerezza はそれらより感情的に特化——柔らかな思いやりという具体的な感情の質が求められる。「甘い」でも「愛情深い」でもなく、「優しい」という独自の感情的色調がある。
弦楽器での表現
弓圧を極力抑え、弦に自然に乗せる。音の出始めを意識せず、弓が弦に静かに吸い付くような感覚。ヴィブラートは幅を狭めて穏やかにかけるか、あえてかけないことで「素の音」の優しさを引き出す。フレーズの終わりを押しつけず、自然に消えさせる——音を手放す優しさが tenerezza の演奏の鍵だ。