記譜・理論Greek

Enharmonic

エンハーモニック / 異名同音(いめいどうおん)

C♯ = D♭同じ音・違う名前

音高は同じだが異なる名前で表記される音のこと。平均律では C♯ と D♭ は同じ周波数だが、理論・記譜上は別の音として扱われる。

主な異名同音ペア

C♯ = D♭
D♯ = E♭
F♯ = G♭
G♯ = A♭
A♯ = B♭
B = C♭ / C = B♯
E = F♭ / F = E♯

最後の2ペアは理論上の記譜で、実際には黒鍵を使わない位置に現れる。

なぜ両方の表記が存在するか

調の「方向性」を示すため。ハ長調の文脈で「C♯」と書けば主音への半音上行を意味し、変ニ長調の文脈で「D♭」と書けば主音への半音下行を示す。同じ音でも文脈によって「どこから来て、どこへ向かうか」が違う。奏者はこの方向性を感じながら音を出す必要がある(特にピュア・イントネーションを持つ弦楽器・声楽)。

異名同音転調(エンハーモニック・モジュレーション)

同じ和音を異なる調の文脈として読み替えることで転調する技法。例:G♯-B-D-F の減七和音を A♭-C♭-E♭♭-G♭♭(=G♭)として読み替え、別の調へ。Schubert、Chopin、Wagner が巧みに使い、遠隔調への突然の転調を滑らかに実現した。

純正律と平均律での違い

平均律ではC♯とD♭は完全に同じ高さだが、純正律や様々な中全音律では微妙に違う高さになる。バロック期のオルガンや鍵盤楽器はC♯とD♭を別の鍵盤として持つものがあった。弦楽器・声楽ではこの微差を演奏中に使い分けることが可能で、和声的な方向性を音高で表現できる。