和声・理論Italian

Ostinato

オスティナート

固執
反復
執拗な繰り返し

同じ音型・リズム・和声が執拗に繰り返される技法。「basso ostinato(バッソ・オスティナート)」は低音部での固執反復を指し、シャコンヌやパッサカリアの基盤となる。

バッソ・オスティナートとシャコンヌ

低音部に固定した音型を繰り返し、その上に旋律・和声が変奏されていく形式をバッソ・オスティナート(またはグラウンド・バス)という。シャコンヌとパッサカリアはその代表形式で、Bachの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」終曲や「パッサカリアとフーガ ハ短調」BWV582が著名な例。低音が何度も回ってくるたびに上声部が変化し、聴衆は同じ基盤の上に無限の展開を聴く。

語源と本来の意味

イタリア語 ostinato(頑固な・執拗な)。動詞 ostinare(固執する)の過去分詞。英語の obstinate(頑固な)と同語根。音楽的には「この音型から離れない」という固執が語源そのまま。近現代音楽では特定のリズムや和音の執拗な反復が催眠的・強迫的な効果を生む手法として広く使われる。

リズム・オスティナートとハーモニック・オスティナート

リズム・オスティナート:特定のリズムパターンを繰り返す。Bolero(Ravel)の小太鼓が極端な例で、全曲を通じてほぼ同じリズムを叩き続ける。
ハーモニック・オスティナート:同じ和声進行を繰り返す。ロックのリフ、ジャズのヴァンプ、バロックの通奏低音などがこれに当たる。

演奏者の視点

オスティナートを担当するとき、「同じことを繰り返しているだけ」という感覚に陥ると演奏が死ぬ。低音オスティナートを弾く奏者は全体の和声変化を感じながら、毎回の反復に「今どの段階にいるか」の意識を持つ必要がある。変わるのは上声部で、自分は変わらない。だからこそ上声部の変化を聴き続けることが仕事になる。

Bach

無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 BWV1004

Chaconne — バッソ・オスティナートの頂点

Ravel

ボレロ

リズム・オスティナートを全曲貫く

Purcell

ディドとエネアス — Dido's Lament

5小節のバッソ・オスティナートに乗せた悲劇

Shostakovich

交響曲第7番「レニングラード」

第1楽章「侵攻」— 繰り返しが圧力に変わる