Volante
ヴォランテ
定義
飛ぶように、翼を広げて。音が空中を舞うかのような軽さと速さを求める語。重力をまったく感じさせない、すべる・浮かぶような音楽的質感が核心。agile(敏捷に)より滑らかさが強調される。
agile・scorrevole との違い
agile(敏捷に)は俊敏さと精確さを、scorrevole(流れるように)は途切れない流れを重視する。volante はさらに「飛ぶ」という動詞イメージから来るため、地面から完全に離れた浮遊感が加わる。音が次の音に向かって飛び立つ、という感覚。
語源と本来の意味
イタリア語 volante(飛んでいる・飛ぶ)。動詞 volare(飛ぶ)の現在分詞形。ラテン語 volare(飛ぶ)に由来し、英語の「volatile(揮発性の・気まぐれな)」と同語根。「音楽が飛んでいる状態」そのものを表す。
演奏上の指針
弦楽器では sautillé(跳弓)や jeté を用い、弓が弦の上を浮かぶように動かす。ピアノでは指先を鍵盤の表面に触れさせるだけのような感覚で、各音が宙を舞う。音量は自然と軽くなるが、決して弱々しくならず——小さくても輝く、飛び回る音が理想。
用いられる楽曲の傾向
ロマン派ピアノ音楽の速い装飾句やカデンツァに多く現れる。エチュードや練習曲的なパッセージ、技巧的な走句など。コロラトゥーラ声楽の軽い高音域のメリスマにも用いられる。