Maestoso
/ maeˈstoːzo /
マエストーゾ
定義
威厳をもって、おごそかに。 空気が変わるような、 王が現れる瞬間の演奏。grandiosoが「壮大さ」なら、 maestosoは「威厳ある存在感」だ。
音の質感
Neutral: 不規則で散漫な線
Maestoso: 堂々とした威厳あるリズム
grandiosoとの違い
grandiosoは音楽のスケールを大きくする指示。 オーケストラ全体が鳴り響くような壮大さ。 それに対して maestoso は「格」の指示だ。 一人のヴァイオリンでもmaestosoになれるが、 grandiosoは一人では難しい。 maestosoはテンポを落とし、一音一音に重みを持たせ、 フレーズに「間」を作ることで生まれる。
語源と本来の意味
イタリア語 maestà(威厳・威容・陛下)から。 ラテン語 majestas(偉大さ・尊厳)に由来。 英語のmajesty(陛下・威厳)と同語源。 イタリア語では君主や神への敬称として使われる言葉でもあり、 音楽における maestoso は単なる「大きな音」ではなく、 神聖で不可侵な「存在の重み」を意味している。
速度との関係
maestosoは発想記号であると同時に、速度も規定する。 Andante maestoso(歩くように、威厳をもって)、 Allegro maestoso(速く、威厳をもって)のように使われるが、 単独で書かれた場合は比較的ゆっくりとしたテンポを示唆する。 速すぎると威厳が崩れるからだ。 音楽に「重力」をかける指示とも言える。
演奏上の注意
maestosoを「大声で弾く」と解釈すると失敗する。 本当の威厳は力みから来ない。 むしろ余裕——十分な時間、十分な息、十分な空間——から生まれる。 音量より「間」と「重さ」を意識すること。 そしてどんなに大きくてもアーティキュレーションの品格を失わないこと。
代表的な用例
Handel
メサイア HWV.56
ハレルヤコーラス — maestosoの神聖さ
Beethoven
交響曲第9番 ニ短調 Op.125
第4楽章冒頭 — Presto, Allegro assai maestoso
Elgar
威風堂々 第1番 Op.39
中間部 — maestosoの典型
Brahms
交響曲第1番 ハ短調 Op.68
第1楽章序奏 — Un poco sostenuto, maestoso感
Tchaikovsky
ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23
冒頭 — Andante non troppo e molto maestoso
Mozart
交響曲第41番「ジュピター」K.551
第1楽章 — Allegro vivaceのmaestoso感