発想記号 Italian

Languido

ランゴイド

物憂げに、倦怠感をもって、力が抜けるように。エネルギーが尽きているわけではなく、意欲や緊張が手放されている状態——夏の午後に体を横たえ、時間がゆっくりと流れるような感覚。積極的に表現する意志を持たず、ただ音楽を流れるままにさせる演奏を求める。

mesto / malinconico との違い

mesto(哀愁をもって)は内向きの悲しみ——感情の重さがある。malinconico(憂鬱に)は継続する暗い情動——比較的能動的な内省。languido はそれより脱力と弛緩が特徴——悲しみより「気力が湧かない」感覚。後期ロマン派の退廃的な美学(デカダンス)と深く結びついた語だ。

語源

ラテン語 languidus(力なく・だるく)—— languere(力が抜ける・衰える)に由来。英語 languid(物憂い)、languish(衰弱する・やるせなく過ごす)と同語源。フランス語 langueur(物憂さ)はロマン主義・象徴主義の詩に頻出し、そのまま音楽用語としても流通した。

演奏上の意味

テンポを引きずるように、フレーズの終わりを手放すように。弦楽器では弓の重さを利用して音に重力感を持たせ、指板寄りで弓を滑らせる。ビブラートは幅広くゆっくり、あるいは意図的に遅らせて開始する。音楽が「進もうとする意志」を持たず、惰性で流れるような演奏が languido の理想だ。

世紀末音楽との親和性

フランス音楽・後期ロマン派・20世紀初頭の音楽に languido 的な性格が多く現れる。19世紀末〜20世紀初頭の「世紀末」(fin de siècle)美学——退廃・官能・倦怠を美として肯定する感性——と この語は切り離せない。「美しく力なく横たわる」音楽の詩学だ。