Dolcissimo
ドルチッシモ
定義
きわめて甘く、とても優しく。dolce の最上級形。甘さと柔らかさが限界まで高められた状態——音が空気に溶けるような、硬い輪郭を持たない、純粋な音色の美しさを求める。
dolce との関係
dolce(甘く・優しく)にイタリア語の最上級接尾辞 -issimo を付けた形。dolce が「甘さ」の方向性を示すとすれば、dolcissimo はその極限を求める——「これ以上甘くできない」という状態。音楽的には、音量をごく小さく抑え、音の出始めと終わりを限りなく柔らかくし、弦のヴィブラートは穏やかに、管の息は均一に流れることが理想的な dolcissimo を作る。
語源と最上級
イタリア語形容詞 dolce(甘い・優しい)に最上級接尾辞 -issimo が付く。ラテン語 dulcis(甘い)から。音楽用語では -issimo で強調するパターンが多く、fortissimo(ff)/ pianissimo(pp)/ prestissimo と並ぶ。dolcissimo は音量の最上級(pp)と組み合わさることが多く、「pp dolcissimo」あるいは単独で指示される。
演奏上の意味
dolcissimo の演奏では、音の発音(アタック)を意識的に消す。弓が弦に触れる瞬間、息が管に入る瞬間——その「始まり」が聴こえないよう、すでに動いているところから音が「現れる」ような感覚。音量は pp 程度が多いが、音量の小ささより音色の甘さが本質だ。鋭い倍音を抑え、基音の丸みを前面に出す。
soave・carezzando との違い
soave(穏やかに・柔らかく)は滑らかさと平静さ。carezzando(なでるように)は触覚的な優しさ。dolcissimo は音色の甘さの極致——質感より「味覚」に近いアナロジーで捉える言葉だ。蜂蜜がとろけるような、蜂蜜の一番濃い部分のような感覚が dolcissimo の目標とする音色だ。