速度変化 Italian

Trattenuto

トラッテヌート

テンポを即座に引き留める。ritenuto の同義語として用いられることが多く、指示された時点から速度を一気に落とす。字義は「途中で保ち留めた」。

一般的な解釈

ritenuto と実質的に同じ意味として楽譜に現れることが多い。テンポを段階的に落とす rallentando・ritardando とは異なり、指示の時点から即座に速度が落ちる。その状態は明示的に解除されるまで(a tempo 等)保持される。

語源と本来の意味

イタリア語 trattenere(引き留める・保ち続ける)の過去分詞。tra-(ラテン語 trans- の短縮;「間に・横切って」)+ tenere(保つ)の合成。ritenuto が「後ろへ引き戻す」ならば、trattenuto は「途中で保ち留める」という字義の違いがあるが、演奏指示としての運用はほぼ重なる。

ritenuto との関係

多くの楽典・辞典では両語を同義と見なす。語源的には ri-tenuto(保ち戻す)と tra-ttenuto(間で保つ)という方向のニュアンス差があり、trattenuto の方が「しばらく保ちながら引き留める」感覚が強いという解釈もある。いずれも略記は tratt.(trattenuto)または riten.(ritenuto)で区別される。

演奏者視点での使用感覚

ritenuto と同様、次の拍から即座に新しいテンポへ移行する。「ためる」というより「しっかり地に足をつける」感覚に近い。弦楽では弓のスピードを抑えて音の重みを出し、声楽では言葉の一音一音を丁寧に刻む。その後の a tempo への回帰が自然に聴こえるよう、落としたテンポを安定させることが重要。