速度変化 Italian

A tempo

ア・テンポ

速度変化(ritardando・accelerando など)の後に、元のテンポに戻ること。「テンポへ」という意味どおり、変化の前の速さに復帰する指示。rit. や accel. の「戻り先」として必ずペアで機能する。

「元のテンポ」はどこか

a tempo が指す「元のテンポ」は、通常その直前に指定されていたテンポ。曲頭まで遡るわけではなく、直近の速度標語(Andante・Allegro 等)が基準になる。tempo primo(冒頭テンポに戻る)とは別の指示なので混同しないこと。

演奏者視点での使用感覚

rit. からの a tempo は「急に戻りすぎない」ことが重要。rit. の最後の音から次の拍で自然にテンポが戻る感覚が理想。単独で書かれていることも多く、その場合は直前の変化が終わったことを示す合図として機能する。

楽曲における役割

rit. や calando の後の「解放」として機能する。感情的に一度落ち着いたあとに推進力が戻る、または rubato による自由なテンポの後に拍が再び明確になる場面に使われる。指揮者がいる場合、a tempo の振りは明確に出す。

tempo primo との違い

tempo primo は「曲の冒頭(または第1主題)のテンポに戻る」という明示的な指示。a tempo より射程が長い。楽章の途中で大きく転換した後に元の世界観に戻るときに使われる。a tempo は局所的、tempo primo は構造的。

Chopin

夜想曲・各所

rubato / rit. の後に必ず a tempo が現れ、拍が戻ってくる

Brahms

ピアノ・ソナタ Op.1

各フレーズの rit. 後の a tempo — テンポの往復が構造を作る

Schubert

即興曲 Op.142

感情的頂点からの「着地」として a tempo が機能する