Sans rigueur
サン・リゲール
定義
厳格さなしに、規則に縛られず。拍やリズムを機械的に刻まず、演奏者の感性に従って自由に動かしてよいという指示。フランス印象派の語法で使われる「揺らぎの許可」を与える語。
一般的な解釈
sans(〜なしに)+ rigueur(厳格さ・厳密さ)。テンポや拍の揺らぎを許容し、音楽の自然な流れを優先する指示。メトロノーム的な正確さを求めず、フレーズが息をするように動くことを期待する。ad libitum や rubato に近い自由度だが、より控えめで「融通の許可」という語感が強い。
語源と本来の意味
rigueur はラテン語 rigor(硬直・厳格)に由来するフランス語名詞。英語 rigour / rigor と同語源。音楽においては「拍の厳密な遵守」を指し、sans rigueur はその否定 = 「厳格に縛られない」。
演奏者視点での使用感覚
「揺らしてよい」ではなく「揺れていてよい」というニュアンス。能動的にテンポを動かすよりも、音楽の自重で自然に伸び縮みすることを肯定する指示として読む。カラッとした機械的スタイルを排し、響きの中に少しの霞みを持ち込む効果がある。
複合指示での使われ方
楽譜上では単独より「dans un rythme sans rigueur et caressant」(厳格さのない、撫でるようなリズムの中で)のような複合形で現れることが多い。sans の後に否定したい性質を置くフランス語の構文で、sans lourdeur(重くなく)、sans dureté(硬くなく)と同じパターン。