発想記号 / 演奏概念 Italian

Virtuoso

ヴィルトゥオーゾ

卓越した
技巧
virtuosità

卓越した技巧を持つ演奏者、またはその演奏の質を称える言葉。単なる「上手さ」を超え、聴衆を圧倒する超絶的な技術と表現力の両立を意味する。

ヴィルトゥオーゾとは何者か

ロマン派(19世紀)において、ヴィルトゥオーゾは現代のロックスターに相当する社会的存在だった。Paganini、Liszt、Chopinはその代表で、演奏会に聴衆が熱狂し、気絶者が出るほどだったと伝わる。技術の誇示が目的化した「技巧主義」への批判も生んだが、その批判自体がヴィルトゥオーゾの影響力の大きさを示している。

語源と本来の意味

イタリア語 virtuoso(美徳のある・優れた)。ラテン語 virtus(美徳・卓越・勇気・力)から。元来は道徳的・知的な卓越性を指す言葉で、17世紀に「芸術的・技術的な卓越性」へと転義した。英語の virtue(美徳)と同語源。「技術のための技術」より「人としての卓越」が原義に含まれている。

カデンツァとヴィルトゥオーゾ

協奏曲のカデンツァ(独奏者が管弦楽なしで演奏する即興的な区間)は、ヴィルトゥオーゾ文化の産物。本来は演奏者が即興で技巧を見せる場だったが、19世紀以降は作曲家が書き下ろしたカデンツァを演奏することが多い。それでもカデンツァは「演奏者が語る」特別な時間として機能する。

ヴィルトゥオーゾ批判と「音楽への奉仕」

Brahms や Schumann(Robert)は、技巧の誇示が音楽の内容を損なうと批判した。「演奏者は作品に奉仕すべきで、自己を前に出すべきでない」という考え方は20世紀の演奏倫理に大きく影響している。しかし技術なき表現は曖昧であり、本当のヴィルトゥオーゾとは技術を透明にして音楽を伝えられる者のことかもしれない。

Paganini

ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 Op.6

ヴィルトゥオーゾ協奏曲の原型

Liszt

超絶技巧練習曲 S.139

技巧の限界に挑む12曲

Chopin

練習曲集 Op.10 / Op.25

技術と音楽性を分かちがたく統合

Brahms

ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77

ヴィルトゥオーゾ技術を内側に秘めた作品