速度変化 Italian

Doppio movimento

ドッピオ・モヴィメント / 2倍の速さで

前のテンポの2倍の速さで演奏すること。doppio(2倍)+ movimento(動き・テンポ)。拍子変換を伴うことが多く、「音符の見た目は変わっても脈拍が倍になる」という精密な速度指示。

l'istesso tempo との対称関係

l'istesso tempo は「拍子変換をまたいで脈拍を同じに保つ」指示。doppio movimento はその対称で「拍子変換をまたいで脈拍を2倍にする」。たとえば 2/4 → 4/4 で doppio movimento が書かれた場合、旧テンポの4分音符1つ分の時間に、新テンポの4分音符が2つ入る。

音符の等式で読む

最もよくある形は 2/4 → 4/4(または ♩=♩ の2倍)で、旧・4分音符=新・2分音符(= 旧・8分音符=新・4分音符)という等式になる。逆に言えば楽譜上の8分音符が「新テンポの4分音符相当の速さ」で演奏される。これを理解せず単に「速く」と受け取ると、意図した2倍ではなく中途半端な加速になる。

演奏者視点での使用感覚

拍子変換の小節線をまたぐ瞬間に「脈拍の単位が2倍になる」感覚。前の小節の最後の音と次の小節の最初の音をつなぎながら、速度感が切り替わる。合奏では指揮者が切り替え点で振り方を変えるが、各演奏者も頭の中で「2倍」の計算を済ませておく必要がある。

楽曲における役割

変奏曲での技巧的変奏(前の変奏の2倍速で駆け抜ける)、コーダへの突入(急激な加速)、または主題の再提示を全く異なる速度感で行うなど、大きな構造的転換点に使われる。doppio movimento の後は energico・vivace など活発な標語が続くことが多い。

Schubert

即興曲 Op.90 No.2

中間部から冒頭主題への再帰で doppio movimento が機能する

Brahms

パガニーニ変奏曲 Op.35

変奏の進行とともにテンポが倍加していく構造

Beethoven

弦楽四重奏曲 Op.59 No.1

楽章内の速度対比に doppio movimento の原理が使われる