Ardito
アルディート
定義
大胆に、果敢に、臆せずに。リスクを承知の上で踏み込む姿勢を音に込める指示。安全な表現の外へ踏み出すような積極性と、躊躇のなさが求められる。
演奏上の意味
ardito は音量や速度の「大きさ」ではなく、意図の明確さを要求する言葉だ。ためらわず音を出す、フレーズを躊躇なく切る、大きなダイナミクスの変化を恐れずに行う——そういった果敢さを指す。臆病な演奏(音を小さめにして安全圏に留まる)の対義語として機能する。
語源
動詞 ardire(あえてする・大胆に行動する)の過去分詞形。もとは古フランス語 hardir(大胆にする)に遡り、ゲルマン語系の「固くする・強くする」に関連する。英語の "hardy"(頑強な)と同語源。音楽では勇敢な性格・英雄的なエネルギーを帯びた楽句に付される。
feroce・eroico との違い
feroce(獰猛に)は野性的な攻撃性を含む。eroico(英雄的に)は堂々たる格式を持つ。ardito はそのどちらでもなく、個人的な勇気・決意の瞬間に焦点がある——英雄の行進ではなく、崖の端に一歩踏み出す瞬間のような感覚だ。
con ardire
同じ語根から派生した con ardire(大胆さをもって)も楽譜に現れる。ardito が状態の形容(大胆な状態で)であるのに対し、con ardire は気概・姿勢を持って演奏することを名詞的に強調する形。いずれも同じ演奏の方向性を指す。