発想記号 Italian

Appassionato

/ appassjoˈnaːto /

アッパッショナート

appass. 略記

熱情的に。感情の爆発ではなく、 抑えきれない情熱が溢れ出す状態。 「熱情(Appassionata)」と名付けられたソナタが、この言葉の全てを語っている。

「激しい」との違い

agitatoが「不安による動揺」なら、appassionatoは「情熱による熱狂」。 同じ激しさでも方向が違う。 agitatoは逃げようとする力、appassionatoは突き進もうとする力。 forteやffの音量を伴うことが多いが、 ppのappassionatoも存在する—— 囁くような、しかし燃える情熱を内に秘めた表現。

語源と本来の意味

イタリア語 passione(情熱・受難・苦しみ)から。 ラテン語 passio(苦しみ・感情・受難)に由来し、 キリストの「受難(Passione)」と同語源。 情熱とは元来「苦しみを伴う強烈な感情」であった。 appassionatoはその語源的な深みを持ち、 単なる「興奮」ではなく「身を焦がすような」感情を指す。

演奏上の注意

appassionatoを誤解すると「ただ大きく速く弾く」になってしまう。 本来は情熱の「温度」を上げることが目的で、 音量や速度はその結果に過ぎない。 フレーズの頂点に向かう「引力」を感じさせること、 音の密度と圧力を高めること、 そして音楽が「どこかへ向かっている」感覚を持たせること。

受難との繋がり

語源にキリストの受難があることを知ると、 appassionatoの演奏が変わるかもしれない。 それは単なる興奮ではなく、何かのために身を捧げるような、 崇高で痛みを伴う情熱だ。 特に「熱情(Appassionata)」ソナタのような作品にあるappassionatoには、 その深みが宿っている。

不安な動揺 appassionatoな情熱

Beethoven

ピアノソナタ第23番「熱情」Op.57

全楽章 — appassionatoの金字塔

Chopin

バラード第1番 ト短調 Op.23

終結部 — appassionatoの爆発

Brahms

ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83

第1楽章 — appassionatoな推進力

Schumann

ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54

第1楽章 — appassionatoな第1主題

Liszt

ピアノソナタ ロ短調

全体 — appassionatoの巨大構造

Tchaikovsky

ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35

第3楽章 — appassionatoな終結