Alla turca
/ ˈalla ˈturka /
アッラ・トゥルカ
定義
「トルコ風に」。18世紀ヨーロッパで流行した オスマン帝国のジャニサリー軍楽(メフテル)の様式を模倣した演奏指示。 鋭い打撃音、明快な2拍子、 低音の重いアクセントと高音の金属的な装飾が特徴。
ジャニサリー音楽とは
ジャニサリー(イェニチェリ)はオスマン帝国の精鋭歩兵部隊で、 その軍楽隊(メフテル)はティンパニ、大太鼓、シンバル、 トライアングルなど大型打楽器を中心に構成されていた。 強烈な低音と高音の対比、シンコペーション、 そして大音量での斉奏—— この異質なサウンドが18世紀ウィーンを席巻し、 「トルコ趣味(Turquerie)」というブームを生んだ。 ピアノの「トルコマーチ」ストップ(ピアノに内蔵された打楽器装置)も この流行から生まれた。
代表的な実例
alla turcaの代名詞はピアノソナタ K.331 第3楽章 「ロンド・アッラ・トゥルカ」。 低音の重いスタッカートとシンコペーションで太鼓を模倣し、 右手の装飾的なトリルがシンバルを想起させる。 「アテネの廃墟」Op.113のトルコ行進曲や 交響曲第9番第4楽章でも同様の語法が現れ、 ジャニサリー音楽の打楽器的なリズムを鍵盤・管弦楽で再現している。
音楽的な特徴
alla turcaが求める具体的な特徴: ①低音のスタッカートと重いアクセント(大太鼓を模倣)。 ②高音部のトリルや装飾音(シンバルや小太鼓を模倣)。 ③2拍子の明快な拍感。 ④全体的に鮮明で乾いた音色。 ペダルを多用しない、残響の少ない演奏がalla turcaに合う。 音が濁ると行進の勢いが失われる。
オリエンタリズムの音楽史
18世紀ヨーロッパにとってオスマン帝国は「異国」の象徴だった。 トルコ軍楽の打楽器的なサウンドは 「非ヨーロッパ的な力強さ」「野性的なエネルギー」として受容され、 作曲家たちは意図的にこの異質性を取り込んだ。 alla turcaは単なる模倣ではなく、 ヨーロッパが「他者」をどう音楽化したかという 文化史的な問いを含んでいる。 その複雑さも含めて、この指示の背景を理解することが演奏の深みになる。
代表的な用例
Mozart
ピアノソナタ 第11番 イ長調 K.331
第3楽章「ロンド・アッラ・トゥルカ」— alla turcaの最も有名な例
Beethoven
アテネの廃墟 Op.113「トルコ行進曲」
オーケストラ版でジャニサリー音楽を再現
Beethoven
交響曲 第9番 ニ短調 Op.125
第4楽章テノール独唱主題 — alla turcaの語法が「歓喜」の一局面を担う
Haydn
交響曲 第100番「軍隊」Hob.I:100
第2楽章でトルコ軍楽器を模した打楽器が加わる